ERECT Magazine #003でのインタビューでもおなじみのChim↑Pomが、高円寺にてアーティストランスペース「Garter」の運営をスタートしました。
またChim↑Pomキュレーション第一弾として、園子温による初個展を開催。2015年6月26日(金)から7月26日(日)まで。
園子温展「ひそひそ星」
会期:6/26(金)-7/26(日)※水曜休み15:00-20:00 会場:Garter @キタコレビル166-0002 東京都杉並区高円寺北3-4-13 問合せ:info.chimpom@gmail.com 入場料:500円
この度、Chim↑PomとGarterは自らのスタジオ「キタコレビル」にて不定期でのアーティスト・ラン・ギャラリー「Garter」を開始することになりました。 プレイベントとして4月に開催された天才ハイスクール!!!!「現物オーバードーズ」展は、1週間のみの会期にも関わらず大きな評判を呼び、1100人もの観客を集めるイベントとなりました。そしていよいよGarterの一発目として、園子温による初個展を開催します。 園子温は、現在日本で最もラディカルな映画監督として知られ、国際的な映画祭の常連としても活躍している表現者です。しかしそのキャリアは「ジーパンを履いた朔太郎」と称された詩人として始まり、絵本の出版、90年代初頭の東京の路上をゲリラでハックし続けた伝説的パフォーマンス集団「東京ガガガ」の主催、水道橋博士とのお笑いデュオなど、ジャンルの壁を傍若無人に渡り歩くものでした。 本展ではその肩書きにこだわらない「芸術家・園子温」としての側面に焦点を当てて、「東京ガガガ」のアーカイブ、新作ハプニングアート「ハチ公プロジェクト」、そして17年ぶりの自主制作映画として制作を終えて、来年の公開を待つ(多分園映画の最高傑作のひとつになるだろう)新作「ひそひそ星」のインスタレーションバージョンの3作を展示します。
【ひそひそ星】 特に「ひそひそ星」への園の思い入れは、「劇場公開したくないくらいだ。」という程強いものがあります。園が多忙なスケジュールを縫って「ひそひそ星」に取り組んだ覚悟と経緯には並々ならないものがありました。「ひそひそ星」は園が1990年に書き下ろし、2015年に制作されたSF作品です。タイトル通り「声高に話せないところ」を描いた本作では、セリフの数は最低限に絞られて、舞台が宇宙にも関わらず、どこでも会話は全てヒソヒソと交わされています。それ故に蛇口をひねる音や蛍光灯の描写など極めて日常的なシーンが丁寧に描かれる、静かでディープな映画となっています。また、本作で主人公が降り立つ星々は、福島の居住が制限されている被災地で撮影され、多くの登場人物も避難中の人々によって演じられました。本展では特にそれらのシーンに絞って再構成された映像インスタレーションとして発表されます。 90年当時、既定路線の日本映画業界や、アクティブさを失い始めた日本社会へのアンサーとして生まれた「ひそひそ星」は、ポストフクシマや言論統制が進む2015年、新たなリアリティを持って私たちの前に現れます。
【東京ガガガとハチ公プロジェクト】 また、「ひそひそ星」を書き下ろしたのちの93年、園は大人しくなりつつあった日本社会に逆ギレするかのように「東京ガガガ」を結成し、毎隔週繁華街のストリートジャックを繰り返すようになります。「毎回逮捕されていた」という程の熱量を持った2年にもわたる活動は、当時ヨーロッパで始まった新たなデモ「リクレイムザストリート(路上を取り戻せ)」や60年代を席巻したネオダダやフルクサスなどの前衛芸術運動とリンクするような、極めて実験的な運動でした。 「ハチ公プロジェクト」のはじまりも「東京ガガガ」に由来します。園はガガガを始めたきっかけを、「当時渋谷のハチ公前スクランブル交差点を見たときに、”ここをかどわかしてやろう”と思った。」と回想しています。人々を無意識のうちに集合させる「待ち合わせ場所」のアイコンとして、ハチ公は園の重要なモチーフでした。本物のハチ公から象られた複製によって待ち合わせ場所の増殖を目論む本プロジェクトの最初の設置場所は、「ひそひそ星」と「東京ガガガ」を繋ぐ場所、福島の居住が制限された区域となっています。
園子温による歩みはまるで、バブル崩壊後の失われた20年や大震災に見舞われた日本社会、そして報道の自由度の下落と反比例するように高まった炎上/監視社会をこれでもかと映し出した、実に透明度の高いまさに社会の鏡のようなものでした。しかし、そんなディストピアへの描写に留まらず園は、どんな状況でもユーモアを持って生きる人々をこれまで何人も描き出し、笑いを前提に表現活動を行っています。その両極の共存にや芸術について、園は以下のように語っています。 「映画でもアートでもなんでも、目指すべきポイントはたったひとつなんだ。そこにたどり着きたいだけなんだ。何千年も生きられない限り人間は、現実には愛と平和の調和を見ることは出来ないだろう。表現は”それを垣間見るための”、けれど”砂鉄と磁石が別れるような”、そんな矛盾と完璧さにたどり着くためのものなんだ。」 芸術家・園子温。日本における最高の問題児である氏初の個展を開催できることを、Chim↑Pomは光栄に思っています。これまで彼に目を向けてこなかったアート業界や、予定調和に陥りがちな社会運動、そして文化を愛する全ての若者たちなど、ひとりでも多くの日本人にこの展覧会を御高覧いただきたいと願っています。 Chim↑Pom
同時開催:「ラブ&ピース・ペインティングス」2015年6月2日(火)〜7月5日(日)
会場:ワタリウム美術館 オン・サンデーズ書店
協力:日活、シオンプロダクション、ワタリウム美術館、無人島プロダクション